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Word Focus TOPページへ戻るNo.80        (第7回トラベラーズワクチンフォーラム報告)
<<トピックス>>     
渡航者用未承認ワクチンの輸入
順天堂大学医学部病理学講座 松 本 高 明

はじめに
 地球規模で多数の人々が往来するようになり、「感染症に国境は無い」という状況にあるなかで、感染症はひとたび発生すれば人(あるいは動物等)の移動により急速に感染の範囲を広げる可能性があることから、国を挙げての予防対策の重要性が指摘されている。こうした中で、欧米では旅行医学の認識のもとに、海外渡航者や滞在者の感染症予防システムが渡航者用ワクチンを中心に構築されている。一方、日本では国内で流行する恐れのある感染症以外のワクチンは製造されておらず、国外で製造されたワクチンも未承認である(未承認ワクチン)。これは承認に必要な治療実験(治試)に関して日本では厳しい規定があると同時に、ワクチンメーカーが渡航者ワクチンを魅力ある市場ととらえず、治験に消極的になっているためと考えられる。それゆえ、国が関与している黄熱以外の渡航者用ワクチンは非常に入手しづらい状況にある。
 筆者は2000年に日本の一施設からの要請を受け、未承認ワクチンを輸入した経験と、この度「渡航者用未承認ワクチンの輸入」に関する最新の知見を得たので以下に報告する。尚、この輸入の手法は「医師が患者の治療に際し、国内で販売されている医薬品等では治療効果が得られず、患者救命のために外国で販売されている医薬品等を個人で輸入する場合」を基に作成した。

輸入割当、薬事監視と通関手続
 未承認ワクチンの輸入には厚生労働省と経済産業省が関係する。まず輸入割当を受ける必要がある。輸入割当(Import Quota)とは、特定品目の輸入を制限する必要がある場合に、輸入可能な数量や金額を輸入者または需要者等に事前に割り当てる制度のことをいう。これは割り当てられた量や金額以上の輸入はできないため実質的な輸入制限となる。
 対象となるワクチンを輸入しようとする場合、1)厚生労働省医政局経済課に事前(およそ3ヶ月前)に輸入計画書を提出し、輸入品目、数量の承認を得る。2)経済産業省貿易経済協力局に輸入製品毎に規定の輸入割当申請書に必要資料 承認済輸入計画書(写)、医師免許証(写)、インボイスなどを添付し提出する(申請書提出後の処理期間は原則として2週間内)。3)承認後、厚生労働省地方厚生局で薬事監視(薬監)を受け、4)承認を受けた輸入報告書と輸入割当申請書に必要書類を添付し、税関で輸入通関手続きを受ける(図1参照)。
 尚、これまでは輸入割当に関する輸入計画書の提出は上期、下期に別けられていたが、両省とも平成18年度上期から手続きの簡素化から年1回で設定することになった。また、薬監証明申請を担当する厚生労働省地方厚生局は東海北陸厚生局を近畿厚生局に移管したため、現在関東信越厚生局、近畿厚生局、九州厚生局沖縄麻薬取締支所の3箇所となっている(図2参照)。
 このようにワクチンは非常に複雑な手順を踏んで輸入する制度になっている上に、日本では薬監担当地方厚生局が3箇所と少ないため、個人輸入は煩雑で難しい状況にある。

物流時の温度管理

 ワクチンは温度管理製品であるため、物流時(保管、輸送時)における温度管理(通常2℃〜8℃)は必須である。前回のワクチン輸入時に製品が使用施設に届くまでの過程と温度管理状況を確認したところ、その結果、海外業者1回、輸出通関業者2回、エアライン1回、輸入業者3回で、メーカーから使用施設まで合計7過程が行われていた。また、輸送期間(5日間)の経時的温度変化は、5+1度という大変良好な結果であった。ワクチン製品のコールドチェーンの重要性は先進国では当然のこととして認知されており、これらの国からの輸入であれば各々の業者に注意を喚起することで温度管理に問題はないと思われる。

輸入にあたっての問題点

 これまで述べてきた事も含めて以下に問題点を列記した。
1.未承認ワクチンの輸入は厚生労働省への輸入計画書の提出、経済産業省への輸入割当申請などがあり、煩雑で時間がかかる。また、薬監証明の事務取り扱い場所が全国で3箇所と少ないため、書類ミスがあれば書類の往復のため時間浪費の可能性が高い。
2.輸入したワクチンの使用制限が厳しい。ワクチンの輸入方法は、1)「医師の個人輸入」と、2)医師主導治験のもと治療試験(治験)計画書を作成し、「治験」として輸入する方法があるが、1)に関しては製品を輸入した医師のみしか使用できないため、複数の医師による一括輸入は出来ない。2)に関しては、メーカーのバックアップが必要であることと、先ずはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を受けるという方法が考えられるが、治験計画書が認められるまでに最低6ヶ月は必要である。
3.ワクチンの確保が難しい。ワクチンはメーカーの予定数量しか生産しないため、感染症の流行やマスコミの宣伝により市場のワクチンが品不足となり、価格高騰する。その対策として、全世界からワクチンを購入できる業者を欧州、北米、オーストラリア等の地域に最低3社は確保しておく必要がある。
4.未承認ワクチンの品質管理は製造国に委ねてられており、事前に品質試験を国内で実施する体制がないため、国としての品質保障が出来ない。

まとめ

 未承認ワクチンの輸入は上述のように煩雑で時間が掛かる。さらに現状では国内に在庫を確保、保管できる施設はないので、その都度輸入せざるを得ない。今後未承認ワクチンの承認が徐々にでも得られれば良いが、それまでは厚生労働省と経済産業省との連携により、簡素かつ安全な「未承認ワクチンの新しい輸入手法」の構築が望まれる。

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