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Word Focus TOPページへ戻るNo.79      (第7回トラベラーズワクチンフォーラム報告)
<<トピックス>>   
日本人渡航者が接種すべきワクチン
川崎医科大学小児科2講座 教授  尾 内 一 信

はじめに
 我が国の海外渡航者数は一時的にSARSで減少したが年間1700万人に達している(図1)。長期滞在者も100万人を超え海外が非常に身近になっている。
しかし、海外特に途上国では日本と違い感染症が制御されておらず、感染症に罹患するリスクが高い。欧米では旅行医学が発達しており、
各都市にトラベルクリニックがあり渡航前に必要なトラベルワクチンを接種して海外に出かける。日本では一部の大都市しかトラベルクリニックがなく、
トラベルワクチンの多くは日本では制圧された感染症のワクチンであるため未承認である。本来なら効果が出るまでに時間のかかるワクチンは、
出国前に打ち終える必要があるが、邦人の多くは渡航後にワクチンを打つ機会が多い。今後何らかの対策を講じて日本人も渡航前にワクチンを打つという本来の姿にする必要がある。われわれは厚生労働科学研究補助金により「海外渡航者のあり方に関する研究」を行っている。本邦の現状を明らかにしつつ、渡航者が容易に安心してトラベルワクチンを接種できる体制を構築したいと努力している。本稿では長期滞在者を対象として承認、未承認にかかわらず渡航時に必要なワクチンについて概説する。

1)先進国で必要なワクチン
 ワクチンは個人を守るためと集団の免疫をあげて流行を制圧することにより個人を守るためと2つの目的がある。途上国に行く時には旅行者個人を守るワクチンが必要であり、先進国に入る時は集団と個人を守るワクチンが必要である。したがって先進国と途上国では旅行者に必要なワクチンは異なる。一番ワクチン先進国の米国では、成人に必要なワクチンは破傷風、A型、B型肝炎ワクチンである。小児に必要なワクチンは、日本と米国でスケジュールが異なるため日本人は足りない分を追加して接種する(表1)。米国は集団を守るという意識が強いため、未接種であれば集団生活を行うためには予防接種が必要となる。B型肝炎ワクチン、水痘ワクチン、ムンプスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチン、インフルエンザ菌結合型ワクチン、髄膜炎菌ワクチンが定期接種であり全員接種を要求される。B型肝炎ワクチン、水痘ワクチン、ムンプスワクチンについては本邦既承認ワクチンであるため、渡航前に接種可能であるが、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザ菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチンについては本邦未承認であるため渡航後米国で接種している。

2)途上国に行く場合必要なワクチン
 途上国で必要なワクチンは、接種する本人のみを守るワクチンであり、渡航地によってそれぞれ予防できる感染症のリスクが異なっている。
渡航地によっては入国に必須のワクチンがある。黄熱ワクチンである。図2に黄熱ワクチンが必要な地域を示す。アジアとアフリカの熱帯地方に分布する。

黄熱ワクチンは1回投与すると接種証明書イエローカードが発行され10日後から10年間有効である。日本では検疫所か検疫所関連施設全国合計19カ所のみで接種できる。黄熱以外には出入国が制限されるワクチンはない。ただし渡航地により感染症のリスクが異なるため渡航地により推奨されるワクチンが異なる。
 表2に渡航地別に推奨されるワクチンを示す。一般的に途上国向けに推奨されるワクチンの種類が多い。どの地域でも推奨されるのが、
A型、B型肝炎ワクチン、破傷風ワクチン、狂犬病ワクチンである。また、都会や山林など渡航地での行動パターンにより推奨されるワクチンも異なる。
このように、 渡航地が先進国が途上国であるか、季節、行動パターン、滞在期間、渡航地の流行状況などの情報を総合してきめ細やかな予防接種の計画を立てる必要がある。

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