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デング熱 (dengue fever) ・ デング出血熱

 国立感染症研究所
 感染症情報センター 室長  岡部信彦

デング熱(denguefever:DF)は現在は国内での感染例はないが、海外ことに熱帯亜熱帯地域での発生は多く、この方面からの帰国者・旅行者の発熱を診るときには、マラリアとともにDFを鑑別疾患の一つとして常に思い浮かべる必要がある。
平成11年4月より施行された感染症の予防及び感染症の患者の医療に関する法律(感染症新法)では、デング熱は4類全数把握疾患に指定されており、本症を診断したすべての医師は7日以内に最寄りの保健所への届出をしなければならない。

 流行状況:熱帯・亜熱帯地帯に位置する世界の国々ことに我が国に隣接しているアジア太平洋地区での発生は多く、最近では南米での流行的発生が報告されている。WHOでは、流行地域と患者数はこの10年間で拡大と増加の傾向にあることから世界的にもっとも重要なRe-emerging Infectious Diseases (再興感染症)の一つとして対策を呼びかけている

 病原・感染経路:日本脳炎ウイルスなどと同じフラビウイルス属に分類される、デングウイルスの感染により発症する。デングウイルスには1_4型の4種の血清型があり、同じ型のウイルスに対しては免疫が成立するが、交叉免疫は成立しない。再感染の方が初感染より重症になりやすいとの説が一般に知られているが、免疫学的な最終的確認まで至っていない。

  感染は、主として黄熱病の媒介蚊でもある熱帯シマカ(Aedes aegypti) に刺されることによるが、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)もウイルスを媒介することがある。熱帯シマカは日本に生息していないが、ヒトスジシマカは存在している。感染経路はヒト→蚊→ヒトであり、ヒト→ヒトの直接感染はない。熱帯シマカは、家の回りの水かめ、たまり水、花瓶の中の水など人の生活圏内で繁殖行動するので、蚊が発生しやすい環境であれば、郊外・農村・都市生活のいずれであろうとも感染は容易に起こる。

 主な症状:不快感、倦怠感に続く突然の発熱、頭痛、全身の筋肉・関節・骨痛などが特徴である。発熱は3−4日目頃に一時解熱傾向をみせるが再び高熱となり、約1週間ほどの経過で解熱する。発熱の後半期に、麻疹様あるいは風疹様であったりする非特異的な発疹が出現する。倦怠感と痛みは激しく、成人では「痛くてだるくてもう何もしたくない」という表現をよく聞く。dengueとは、スペイン語のdengueroからきており(英語のdandy )、その激しい背部痛による姿はしゃれ者(denguero=dandy)があたかも気取って歩くような姿に似ているから、とされている。

軽症のDFは、他の熱性ウイルス性疾患、例えばインフルエンザなどと臨床症状からの鑑別診断は困難である。
本来DFは自然に回復する良性な疾患であるが、血小板の減少により出血傾向を伴ったデング出血熱(dengue haemorrhagic fever:DHF) に移行することがあるので、注意が必要である。血管の透過性亢進による血漿成分の喪失からhypovolemic shock におちいるデングショック症候群(dengue shock syndrome: DSS)とともに、死に至ることのある重篤な病型である。
 臨床検査・ウイルス学的検査:白血球数の低下、総体的なリンパ球数の増加、血小板数の低下がみられる。ウイルスの分離は血液を材料として行われる。PCR 法で血液中のウイルスDNAを検出する方法もある。HI・中和・酵素抗体(ELISA) などによる、血清抗体測定も利用されるが、デングウイルスの抗体反応は日本脳炎などとの交叉反応が強く、特異的IgM抗体を検出した場合を除いてフラビウイルス感染の証明という程度に留まる。

 治療:特異的な治療法はない。出血やショックに至らず、DFに留まっている場合には、対症療法および脱水の予防が治療の中心となる。アスピリンのように抗血小板作用の強いものを鎮痛解熱剤として投与してはならない。したがって、DF常在地もしくはそこを経由して来た帰国者・旅行者などの発熱に対するアスピリン類の投与は、すべきではない。

 DFワクチンは、実用化段階にまでは至っていない。なお日本脳炎に対する抗体があるとDFが重症化するのでDF流行地に行く人に対して日本脳炎ワクチンは接種するべきではないとの説明が一部でなされることがあるが、日本脳炎ワクチン接種によってDHFの発生が増加したという報告はなく、DF/DHFと日本脳炎の両疾患が存在する地域へ長期に旅行する人に対しては、日本脳炎を予防するために日本脳炎ワクチン接種が勧められる。
 日常のDF対策としては、蚊の発生を極力防ぐように生活環境の整備をすること(ぼうふらがわかないように工夫する)と、出来るだけ蚊に刺されないようにすることに尽きる。

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